2016年にスタートし、上中下越の3カ所で農業に欠かせない水利の歴史や恵みを座学で学びました。今年は、引き続き県内各地の国営土地改良事業の取り組みや地域農業の姿を紙面で紹介します。また読者とともに各地の農業水利施設や農家を訪ね、その生産物を収穫し、食と農について語らう「農業体感ツアー」を行っています。1月に開催予定のシンポジウムでは、その年度の活動を総括します。
「水利が拓く実りの明日へ」キャンペーン概要
国営土地改良事業とは
未耕地を農地に変えること、農地の生産性を高めることを目的に水系ごとに効率的な水の管理運用を行っています。新潟県内では、5つの北陸農政局の事務所・事業所で事業を進めています。農業は育てる品種などによって水が必要な時期、あっては困る時期があり、それに応じた水管理ができなくてはその土地で栽培することが難しくなります。既存設備の保守管理と同時に、地域農業の変化に合わせた適切な運用を行うことによって、地域の食と農を支えています。また、水利ダム等は地滑り対策や砂防対策を兼ねており、農業基盤だけでなく広く地域の生活基盤を支える役割も担っています。
身近で活躍している主な水利施設
新潟市西区新川河口排水機場
1971年に稼働しました。増水した新川の水を海に流し、海抜ゼロメートル以下の農地や宅地が多い周辺地域を、浸水被害から守っています。直径4.2メートルの羽根車のポンプ6台を設置し、排水能力は毎秒240立方メートル。これは小学校の25メートルプール1杯分に相当し、国内最大級です。
西蒲原地域西蒲原地域のほ場整備
新潟市西蒲区の道上地区では2008年から19年にかけ、ほ場整備が進んでいます。10アールの水田を30アール~1ヘクタールに拡大し、作業の効率化を図ります。また、地下の水位を自在にコントロールするシステムにより、コメと園芸作物を交互に栽培することもできます。
新発田市加治川第2頭首工
新潟平野北部の穀倉地帯を潤すため、約20カ所の取水口を統合し、1970年に建設されました。上流の内の倉ダム、第1頭首工とともに、加治川流域の農地へ計画的に水を届けています。第1頭首工では農業用水のほか、水道水も取水しています。
上越市・妙高市上江用水路
上越、妙高の両市にまたがる全長約26キロメートルの農業用水路です。地元の農民が約130年間にわたり掘り継ぎ、江戸時代の1781年に完成させました。現在も約2600ヘクタールの水田に水を運んでいます。2015年10月、県内で初めて「世界かんがい施設遺産」に登録されました。
柏崎市高柳地区栃ケ原ダム
2010年から使われている農業用ダムです。16年春先の水不足の時に、ダムから水を放流することで渇水を防ぎ、高品質なコメ作りを支えました。柏崎市内の後谷ダムや市野新田ダム(建設中)と共に、柏崎刈羽地域を潤す水がめとして活躍します。